2004年の春先、中国を旅していたときのこと。
上海の安宿で、たったいまラサから帰ってきたばかりという年配のバックパッカーと出会った。
これからラサへ向かうかもしれないという小生の趣旨を伝えると即座にやめといたほうがいいという。
「10年前ならまだしも、今行っても失望するだけさ。ポタラ宮なんて入場制限が布かれる始末なんだぜ。中国人の観光客で一杯さ。」
なるほど、それでは昔のチベット世界が今なお色濃く残っているお奨めの地域とは?と謙虚に尋ねてみた。
彼の口から洩れてきた単語はなんとなく懐かしい響きがした。
その土地の名は「Ladakh」…。
1974年まで外国人の入国は禁じられていたこともあり、
古来からチベット仏教に根ざした独特の文化を形成してきたとされる現代に残された最後の桃源郷。
しかし、残念ながら冬場は氷点下30度を越える厳しい寒さの為、交通が途絶えてしまっているらしい。
行くとしたら、比較的気候が温暖な6月から8月にかけてがベストだという。
バンコクでインドビザを取得して半年あまり。機は熟した。
苦節10年、ついにチベット文化圏に足を踏み入れるその時がやってきたのだ。
折りしも6月22日から26日にかけて、へミス寺でへミス・ツチェと呼ばれるラダックで最も大規模とされるお祭りが開催される。
伝統的な仏教の教えを仮面舞踏の形で表現するビジュアル的にも注目を集める一大イベントだ。
今回の旅は、それに参加する絶好のチャンスではないか。
さらに今年は例年の祭りに加え、12年一度のNARO GYANTOOK(ナロガントック)なるお祭も同時に行われるらしい。
期待はいやが上にも高まる。
これはもう絶対に行くっきゃないのだ!